職人ミヒャエルは、とにかく楽器が大好きです。
その中で、一番彼の心に近い存在は、チェロです。
17歳の時、どうしてもチェロ弾きになりたいと、シュツットガルトでプロの先生について学んだこともありました。
しかし、父親の反対もあり(多分お金がかかるから)、断念しました。
ミヒャエルの心の近くには、いつもチェロの音があります。
ドイツから日本に移住するとき、彼が17歳から持っていたチェロは、人にあげてきてしまいました。飛行機の運賃や日本での保管場所など色々考えたら、今は必要ないと決めたのでしょう。
日本で心機一転。
新しい場所で、新しい生活をするために、ドイツで大切にしてきたものをすべて処理したのでした。それほど、ミヒャエルにとっての日本移住は、決死の覚悟でありました。
日本で生活を始めて、言葉が話せない、思うようにコミュニケーションが取れないことを、大きなフラストレーションとして抱えるようになりました。
そんな時、言ったんです。
『自分の心の中を吐き出すためには、チェロが必要なんだ』と。
日本に移住したての私たちは、経済力はなく、チェロを購入する余裕なんてありませんでした。
しかし、彼はあきらめませんでした。
耳が人一倍敏感なミヒャエルですから、チェロも当然クオリティの高い物を求めなくてはなりません。
クオリティの高いチェロ。
それは、値段も高い。
それは、日本に存在しない。
色々調べた結果。とある外国のメーカーさんが、ミヒャエルの心に留まりました。
値段はやはり、高かった。
しかし、あきらめませんでした。
メーカーさんも、ミヒャエルを深く理解し、半年以上かけて作り上げてくれました。
ミヒャエルのためのオリジナル作品。
このチェロで、一昨年は札幌でのチェロ発表会に参加させていただきました。
ショパンのソナタ。(第二楽章だから比較的難しくない曲)
写真は、その時の緊張している彼です。
クライスオルガン工房には、ミヒャエルの大切なチェロも保管されています。